わたしの白。vol.1
2022/03/04衣・食・住を私らしく、気持ちよく。
日々の暮らしに寄りそってくれる白いものたち。
写真=伊藤徹也 取材・文=仁田恭介
存在感のある器
置いてあるだけで絵になる白が好き
白い器は料理を盛りつけるだけでなく、見ているのも好きです。どういうものに惹かれるの? と聞かれると困ってしまうのですが、すべてに共通しているのは、削ぎ落とされたデザインで、シンプルであること。
お気に入りだけを並べた食器棚の中段右にあるのは、粉引と黒陶をずっと作り続けている伊豆の陶芸家、花岡隆さんの片口です。中央は、富士山の麓を拠点にしている作陶家、吉田直嗣さんの器。左はイギリスのウェッジウッドのボウルです。味わい深いずっしりとした白、しっとりとした優しげな白、透明感と艶のある白。形はベーシックですが、白の表情や肌触りに三者三様の個性と温もりがあります。
棚の上段に並べた花器は、作り手も違えば、コロンと丸いものからシュッとした縦長のものまでデザインもすべて違います。でもどことなく纏っている雰囲気は似ていますよね。どれもすっきりとシンプルですが、存在感がある。そんな白い器が大好きです。
パリッとしたリネンのエプロン
名前の刺繡に仕事への思いを込めて
プライベートで身につけるエプロンは絶対に白と決めています。コックコートが必ず白であるように、料理家にとって白いエプロンは特別で、ちょっと言いすぎかもしれませんが、アイデンティティのようなものなんです。
私の定番はアイロンをかけてパリッとさせた時に着心地のいいリネン素材。名前に恥じない仕事をしようという気持ちを込めて、胸元に「KURIHARA」と刺繡を入れています。真っ白なエプロンは私にとってすべての基本。紐をキュッと結んだ瞬間、気合が入るとともに、今日というその一日を目いっぱい楽しもうと前向きな気持ちに切り替わるんです。
そして、白いエプロンをしていると、一つ一つの作業を丁寧にやろうという意識になり、料理もよりおいしくできるような気もします。油や汁がはねて汚れてしまったら、その都度しみ取りをして、真っ白になったエプロンにまたアイロンをかけてキュッと結ぶ。40年以上ずっと変わらずに続けていることです。