プレビューモード

「寂しくても、楽しく。」思い出の器

第四回  ガラスのボウル

写真=山口 恵史  文=仁田 恭介

 

まるでアートのように美しい影をつくるボウル

今から30年以上前、料理家になってまだ駆け出しだった頃に、仕事でお世話になった方からプレゼントでいただいたガラスのボウルです。国内だけでなく国際的にも高く評価されている、新倉晴比古さんという奈良のガラス作家の作品で、直径は約30cm、深さもしっかりあって、これほどのサイズはなかなか見かけません。なにより白のドット柄がかわいくて、栗原家の食卓に欠かせない定番の器になりました。
とにかくどんな料理でも合うのが魅力です。シンプルなグリーンサラダやポテトサラダ。薬味をたっぷりのせた鯵の南蛮漬けや冷や奴、夏はそうめんや冷製トマトパスタを入れたり、ぎっしりと氷を張ってお刺身を盛ったり。ガラスの器は涼しげな印象があるかもしれませんが、この白いドット柄のボウルは、春夏秋冬、季節を問わずに使えるので、とても重宝しています。
あと、置いておくだけで絵になるのがいい。今までたくさんの器を見てきましたが、飾っているだけで素敵な風景になるガラスの器はあまり見かけません。吹きガラスならではの雰囲気が美しく、手仕事の温かみがあるからだと思います。わが家では日が差し込むキッチンの棚のいちばん上に置いています。光が当たるととてもきれいで、ガラスの表情が際立ち、ハンドペイントされたドット柄がアートのような影をつくるんです。水を張って花を浮かべてもきっと素敵だと思います。