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「寂しくても、楽しく。」飲み友達と乾杯

第6回 松原耕二(ジャーナリスト・作家)

写真=阿部 健  文=内田いつ子

栗原さんが親交のあるゲストを迎えてお届けする対談。飾らない会話から、ゲスト、そして栗原さんの素顔が垣間見えます。第6回はジャーナリスト・作家の松原耕二さんです。

世の中のことをきちんと理解しているすごい人

栗 - 松原くん、こんにちは。何を飲む? 

松 - はるみさん、こんにちは。ではアイスティーをお願いします。

栗 - チーズケーキも焼いたから食べてね。

松 - いつもありがとうございます。はるみさんとは宮本亞門さんのお宅ではじめて会って、もう10年になりますね。


栗 - 私たち二人とも亞門ちゃんとはつきあいが長いのよね。私は同じ10年になるかな。

松 - 僕は20年くらいです。T‌B‌S時代に支局長としてニューヨークに赴任していたことがあって、同じ時期に亞門さんはブロードウェイで、東洋人初の演出家としてミュージカル『太平洋序曲』を手がけていらしたんです。そのときにお会いする機会があって、食事をご一緒したら、はじめてお会いしたのに「テレビ局勤務で、ニューヨーク支局長まで務めて仕事も順調なのに、なぜ松原さんは満たされていないんですか?」って言われて。僕、びっくりしてね。なんでわかるんだろうって。そんな話をしてから仲良くなりました。

栗 - 彼は人の心を読むのが上手よね。

松 - 亞門さんもはるみさんも、とてもナイーブで繊細。

栗 - 松原くんもそうよね。

松 - 実はね。あまりそうは見えないかもしれませんが。そういう方々が集まっているから、とても気が合うんですよね。

栗 - 亞門ちゃんの家で、松原くんの55歳の誕生日にサプライズパーティをしたこともあったね。

松 - あれは本当にびっくりしました。妻も知っていたのに知らん顔で(笑)。わが家の愛犬、ソラまでいて僕だけが知らなかった。

栗 - 松原くん、涙目だったよね。

松 - サプライズなんてされたことないから、もううれしくて。思わず泣いちゃいました。はるみさんと仲良くなってからは、お宅にもよくお邪魔していますよね。いつだったか、僕が知り合いから立派なマンゴーをいただいたので、はるみさんにおすそ分けしようと思って、妻と一緒に届けに行ったことがありました。

栗 - そうそう、あったね。

松 - 伺ったのは夕方だったから、玄関先で渡してすぐに帰ろうとしたら、「あがっていって」って言ってくれて。4時ごろだったかな。急にお邪魔したのに、料理を作ってくれて、結局宴会になったんですよね。

栗 - 亞門ちゃんにも声をかけたら、来るっていうから途中で合流して、結局6人くらいになって。みんな酒豪だから、一晩でワインを13本もあけて。

松 - すごかったですね、あのときは。栗原家のワインセラーから、とっておきのボトルをずいぶんあけていただきました。それにおみやげまでもらって帰ったんですが「やけに重いな」って思って家で見たら、袋の中に立派な桃がゴロゴロあって、そのうえ僕たちが持って行ったマンゴーまで入っていたという(笑)。翌朝、はるみさんにお礼の電話をしたら「そういえばうちの桃が全部ないの!」って。いや、それ僕が持ってますからって。

栗 - あはは、あの夜は楽しかった!

松 - おいしいものをたくさんいただいて感動しました。だって僕ら、夕方にいきなり行ったんですよ。事前に用意してたわけじゃなく、そのときにある材料で作ってくれたものが、とびきりうまかったのが忘れられなくて。改めて、はるみさんってすごいなと思いましたね。

栗 - わが家はお客様も多いし、よくあるのよ。


松 - それに、はるみさんと会うと、いつも今楽しいと思っていること、これからやりたいと思っていることなど、話すことがすごく前向きだから元気になります。読者の皆さんもきっとそうなんじゃないかな。はるみさんのお料理はもちろんだけど、生き方や考え方に共感している方が多いと思います。

栗 - だってやりたいことがたくさんあるし、人生は楽しいほうがいいじゃない。過去を振り返っても仕方がないしね。

松 - 以前、はるみさんを質問攻めにしたこともありましたね。僕は「栗原はるみ」という人にとても興味があったから。

栗 - 私、なんて言ってた?

松 - お話を聞いていて、「この方は本当に自分の好きなことをやってきたんだな」って思ったのを覚えています。実はそのころ、僕はこの仕事を続けるべきか悩んでいたし、迷いがあったんです。そんなときに、はるみさんの話を聞いて、その生き方にすごく励まされました。好きなことをして生きるって、こんなにも素敵なんだって。だからT‌B‌Sを辞めようと思っていた僕に、B‌S-T‌B‌Sにいる先輩が「こっちに来たら、作りたいものが作れるよ」って声をかけてくれて、『報道1930』をやることになったとき、そしてその後フリーになったとき、そんな節目節目にいつもはるみさんの存在が背中を押してくれたような気がして、すごく感謝しているんです。

栗 - 松原くんのことは筑紫哲也さんの『N‌E‌W‌S‌23』のころからずっと、すごい人だなって見ていました。世の中のことをきちんと理解していないと、ニュースは正確に伝えられないでしょう。今も松原くんの番組は大好きで、よく見ている。

松 - ありがとうございます。今はキャスターと編集長もやっているし、日曜朝の『サンデーモーニング』にも出演しているので時間に追われる日々ですが、やりがいもあります。

栗 - 松原くんの今までのキャリアがなかったらできない仕事です。80歳まで続けてほしいな。

松 - 80歳! できるかな。はるみさんを目標に、一日一日を積み重ねていきたいと思います。

GUEST  松原耕二  Koji Matsubara
 1960年生まれ。ジャーナリスト・作家。早稲田大学卒業後、TBSに入社。報道局社会部記者に。『JNNニュースの森』や『NEWS23X』のメインキャスターを経て、現在はBS-TBS『報道1930』メインキャスター・編集長、TBS『サンデーモーニング』パネリスト。著書に『勝者もなく、敗者もなく』(幻冬舎)、長編小説『ハードトーク』(新潮社)など。元保護犬であるソラくんを愛する愛犬家の一面も。ソラくんは宮本亞門さんの愛犬ビートくんとも仲良し。