「寂しくても、楽しく。」飲み友達と乾杯
2022/12/28第3回 川口清勝 (アートディレクター)
写真=阿部 健 文=内田いつ子
栗原さんが親交のあるゲストを迎えてお届けする対談。飾らない会話から、ゲスト、そして栗原さんの素顔が垣間見えます。第3回はアートディレクター・川口清勝さんです。
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私を引っぱり出して、人生を解放してくれる大切な友達
栗 - 川口さんは私がいちばんよく食事に行く男友達なの。先々週も会ったわよね。
川 - お互いに忙しいけど当日の夕方に突然電話をかけて、「今日どうですか ?」って誘える気のおけない仲間、というか。
栗 - そもそもの出会いは、共通の知り合いを通じて、私の会社のロゴデザインのリニューアルを川口さんにお願いしたときだから、17年くらい前かな。それから今度は私が仕事をいただくようになってね。ハワイが好きだと話したら、ハワイの観光 大使の仕事も声をかけてもらって。
川 - ハワイでのイベントにもずいぶん参加しましたね。
栗 - そして、ハワイ大使の仕事がきっかけで、ハワイの大学の先生に「うちの学生に和食を教えてくれませんか?」と声をかけてもらって、コロナ前の10年間は、年に2回はハワイに教えに行っていました。
川 - 僕もサーフィンが好きでハワイによく行っていたし、仕事もあったので、だったら栗原さんと一緒に何かできないかなと思って、いろいろ相談しましたよね。そうしたら栗原さんは、やるならハワイの人たちのためになることをやりたいって。
栗 - 例えば地元の塩や材料を使って、ハワイの人も、そして観光に来た日本の人にも喜んでもらえるものを作りたかったの。
川 - それでやっと塩クッキーにたどりついた。
栗 - ハワイで一緒に仕事をするときは、川口さんが一軒家のような宿を手配してくれて、楽しかった。
川 - そうそう、気心の知れた人たちばかりだったし、仕事から帰ってくると、栗原さんが「おかえりー」って迎えてくれて。みんなが集まるリビングに行くと、冷えたワインやスペシャル・ヒレカツを出してくれて、最高に楽しかった。
栗 - そんな時間を過ごしているからか、川口さんとは気が合うし、心が通じ合っていると思っているの。夫が亡くなったときも、「大丈夫 ?」と言葉にはしないけど、心配してくれているのが伝わってきて。
川 - だって大丈夫なはずはないとわかっていましたから。
栗 - あのとき映画に誘ってくれたのよね。玲児さんが亡くなって、 私が落ち込んでいるのを知ってて誘うって、勇気がある人だなって思ったのよ。
川 - 栗原さんを慰める役目は皆さんにお任せして、僕は外に連れ出す係になろうと思ったわけです。ちょうど、栗原さんが大好きなエルトン・ジョンの『ロケットマン』が上映されていましたからね。
栗 - 玲児さんが亡くなって3ヵ月く らいのときかな。私はまさに家にこもりっきりで。行ってみたら、映画館の小さなテーブルがついた席を予約してくれて、ワインとちょっとしたおつまみも用意されていて。気持ちがうれしくて、あのときのことはずっと忘れられない。
川 - 肝心の映画はあまり面白くなかったですか?(笑)。
栗 - 川口さんはそうやって人を楽しませることが好きよね。そしてお酒もよく飲む。だから一緒にいて楽しいの。おいしいお店にもよく連れて行ってくれて。
白ワインには、川口さんが来るときにいつも焼く手作りのパンと軽いおつまみを。
川 - ハワイのときの恩返しは、そういうときにしかできませんし、それに栗原さんと一緒に食事に行って楽しいのは、同じ料理を食べても僕とは視点や感想が違っていて、それを言い合えるのもとても気楽で。それから僕と栗原さんは職業は違うけど、共通しているなと感じる部分があってね。僕はアートディレクターという仕事を通じて、この作品を人に見せたらどんなふうに思われるか、どう伝わるだろう かと、作った先のことを常に考えずにはいられない。僕は栗原さんもそうなんじゃないかといつも感じています。栗原さんは料理を作った先にある、人とのコミュニケーションまで考えているでしょう。そんなふうに考えて料理を作っていることに驚いたし、とてもリスペクトしてます。
栗 - 私も川口さんのことは尊敬していますよ。
川 - それに栗原さんはいつもデニムを着こなして、とても爽やかだけど、実はめちゃくちゃ頑固。でもそれは自分が作ったものに対して、できた先のことを考え て「ちょっと違うかも」って 思ったら、戻って丁寧にやり直 すから。そこもすごいなって。 僕は「まあいいか」ってこと もよくある。それじゃいけない なって、栗原さんを見ていてい つも思います。
栗 - 仕事は自分そのものだから、妥協はしたくないし、責任を持ちたいと思っているの。私も川口さんには感謝しているのよ。インスタグラムをやるように薦めてくれたのはあなただから。
川 - そうでした。自分が発信できる 自由な道具を持ったほうがいいと思ったから薦めたんです。読んでくれる人と直接つながるというのは圧倒的な価値だから。
栗 - 私と同年代の人にも、年上の人にも元気でいてほしいの。ファッションを楽しんだり、やりたいことはやったほうがいい。年齢に負けずに悔いのない時間を過ごしたいと思っているから、そういうことが発信できたらいいし、若い人たちにも伝えていけたらいいなって。川口さんは私を引っぱり出して、人生を解放してくれる人。いつもありがとう。
川 - そろそろ月額のコンサルタント料をお願いします(笑)。
GUEST 川口清勝 Seijo Kawaguchiアートディレクター・多摩美術大学美術学部グラ フィックデザイン学科教授。大学を卒業後、電通へ入社。その後1999 年にクリエイティブ・エージェンシー、TUGBOAT(タグボート)を設立。サーファーで、日本プロサーフィン連盟(JPSA) アドバイザーや、NPO 法人キッズ・セーバー理事長としての顔も持つ。
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