「寂しくても、楽しく。」思い出の器
2022/12/14第三回 花びらのお皿
写真=山口恵史 文=仁田恭介憧れだったフランス食器。 私にとって、初めての冒険
器特集をすることになり、食器棚にあるお皿や鉢、白磁のお皿などを全部取り出して整理しながら、何点あるか数えてみました。細かいものまで合わせると 5000点以上はありそう。それだけあると記憶にないものも多いかなと 思ったんですが、撮影で使う器はすべて自分で選んで買ったものだけということもあって、全部しっかり覚えていました。中でも思い出深いのが、このお皿とカトラリー。今から30年ほど前、器にのめり込んでいた私は、代官山にあった「テーブルギャラリー」が好きで、毎週のように通っていました。フランスから輸入 した食器や雑貨を取り扱う、すごくセンスのいい素敵な店で、いつかここで器を買いたい! と専業主婦のときからずっと憧れていたのです。それから料理家になり、『ごちそうさまが、ききたくて。』の出版をきっかけに、自分のお金でほしいものを買えるようになったころ、ようやく念願叶って購入したのがこの花びらのお皿とカトラリーです。「かわいい!」と一目惚れ。当時は白磁のお皿でこんな斬 新なデザインのものはなかったんです。それまでシンプル な和食器しか持っていなかった私にとって、思い切った買い物でしたが、そのときの高揚感とときめきが、このお皿には詰まっています。紋章のようなデザインのスプーンとフォークもサイズが小さめでかわいい。「器は冒険しよう !」がポリシーですが、私にとっての最初の冒険は、このお皿なんです。